INTERVIEW

株式会社ヤマト 様 電気ヒータ・熱電対・工業炉・真空装置の設計/製造/販売(大阪府大阪市平野区)

「AIエージェントは、全員で」
~製造現場まで含めた全社員研修から、AI推進委員会が立ち上がるまで~

株式会社ヤマト(大阪府大阪市平野区)
代表取締役 辻井 竜太 様 × 重田 様・福原 様
担当講師:榛葉×遠山

辻井社長 インタビューカット

大阪市平野区に本社を構える株式会社ヤマト様。 とにかくユーモア豊かな辻井社長と、ヤマトを支える名コンビの重田さん、福原さんにインタビューをさせていただきました。

ヤマト様は「温度」と「加熱」の専門家集団として、電気ヒータ、熱電対、工業炉、真空装置を設計から製造・販売まで一貫して手がけ、自動車、鋳造、電池開発、新エネルギー、資源リサイクル——幅広い産業の現場を、その技術力で支えています。

同社がAI研修を実施したのは、2026年5月末から6月上旬にかけて。

特徴的だったのは、最初から「全社員」で受けると決まっていたことです。
二班に分けて、製造現場のメンバーまで含めたほぼ全員です。

その決断の背景には、代表取締役・辻井竜太社長の明確な意図がありました。

そして研修から数ヶ月。
ヤマト様の社内では、AI推進委員会が立ち上がり、ルール整備が進み、現場からは次々とカスタムAIや自動化ツールが生まれています。

その変化の背景に何があったのか。
代表取締役の辻井社長と、営業事務・経営企画・広報を担う重田様、福原様にインタビューをさせていただきました。

辻井社長インタビュー

辻井社長 インタビューカット

── AI研修の導入を考えるようになったきっかけを教えてください。

うちは毎年、全社員を集めて事業計画を発表してるんです。
その作り込みのために、4〜5ヶ月前から僕自身がひたすら情報収集をしながら作成をする。

その情報収集の中で「AIエージェント」というキーワードが出てきたんですよ。
生成AIは知ってた。知ってたけど、その続編どころか、自走するAIですよ、という情報が出てきた。

企業がどう活用するかをいろいろ模索したんやけど、当時は導入事例が著しく少なかった。
今でこそ増えてきてますけどね。

そこで僕が出した答えは、やっぱりすごいツールやなと。
何がすごいって、大手企業も中小企業も、同じアプリケーションを同じような金額で使えること。こんなチャンスはなかなかない。

要は事業計画の発表が終わったタイミングで、今期の大きなテーマが「AIエージェントの全社導入」やった。だから専門家からちゃんと教えてもらおう、そういう流れです。

── AIスパルタンを導入パートナーに選んだ理由を教えてください。

これは本人居る前で言うのはあれやけど、正直、榛葉君があまりにおもろかった。

仕事っていうのは、何をやるかだけじゃなくて、誰とやるかも重要視してます。
今期AI全社導入のパートナーとして「この人とやったら絶対うまくいくやろ」という事を感じたんです。

ただAIエージェントを勉強するだけが目的じゃない。
研修2~3日やってもらってサヨウナラの話じゃなくて、もっと長い目でおもろいと思った仲間と新しいことをやろうとしていた。その目線で見て御社を選んだというだけの話です。

── 研修前後で社員の皆さんの様子を見てどんな感想を持たれましたか。

社員がどういう風になるか、彼らが受けて何を思うかっていうのはね、事前段取りで8割決まるわけですよ。

事前に伝えてるんです。
「ちょっと高い金払って、わざわざ東京から来てもらう。とりあえず聞いたってや。俺は今期この事業にかけたんや」と。

これを全員がフラットな状況で聞く。よーいドンでやる。
パソコンが苦手な子から得意な子まで、同じ平等なチャンスが与えられる。
チャンスが来たぞ、と。そこにプラス、むちゃくちゃおもろいやつが東京から教えに来る。
こいつから聞いたらもう間違いない、と。

そこまで事前に段取りができてたら、彼らにどう刺さって、どういう反応をするかは想定できるじゃないですか。AI導入なり研修をあそこに頼んだから、あとは頼んます、という態度では最も高い効果を得る事は難しいと思います。そういう意味で事前段取りが8割なんです。

段取りも準備もせんと「はい、聞いといて」でやるのと、きっちり段取りして情報を与えて、彼らが食いつく姿勢で聴くのと。どっちが効果ありますかって言ったら、当たり前の話でしょ。こっちでやれることをやらないと。

(榛葉:たしかにヤマトの皆様の意欲はハンパではなかった、、、)

結局さっき言ったように、何をするかじゃなくて誰とするか。
役割分担がバチっとできたら、はまるんですよ。

社内の講演会や研修は、完全に費用対効果で効果が出なあかんもんですから。
きっちり段取りしましたよ、という話です。

そこにあなたたちのキャラクターと、ここの信頼関係が全部はまれば、ああいういい雰囲気の研修になる。講師の引き出しをどんどん開けられて、こっちからしたら普段聞けない情報が聞けて、必要な時にサポートしてもらえる。Win-Winやんか、と。

辻井社長 インタビューカット

── ヤマト様が最初から全社員で研修を受けた理由を教えてください。

これは全員で受けへんかったら意味がない。

うちの場合は事前に僕が情報収集をして、AIエージェントとはどういうものか、生成AIをどう活用するかを掴んだ上で、全社テーマにもう掲げとったから。
最初から全員で受けると決めてました。

なぜかというと、この段階でAIエージェントに触れるわけやんか。
そこで持ってる情報に差がついたら、会社の業績としては数字が動かへんと思うんです。
一人だけ速くなっても、仕事は人と人でつながって流れてるんやから、持ってへん側で必ず詰まる。

AIエージェントがどんだけインパクトを与えるかというと、考えるプロセスも変わるし、考え方も変わるし、下手したら社内の公用語すら変わるわけですよ。だから一部の社員だけが触れている状態は、社内に「言語の違う人」が二種類いる状態になる。
それぐらいのイノベーションでしょ、AIは。

このイノベーションの機会を全員に与えるっていうのは、会社としては当たり前のこと。

そろばんから電卓になったのも、パソコンになったのもそう、固定電話からスマホになったのもそう。これも同じイノベーションでしょ。全員で乗っからんかったら意味がない。

── 研修後、社内ではどのように運用されていますか。

今はもう、クレジットも何も気にせず、他に使いたいAIツールがあっても、とりあえず試してみろ、という形にしてます。

全部、事前に目的を決めてるんです。2ヶ月間は慣れる期間。別にクレジットを消費しようが何をしようが、エージェントを使っていっぱい減りました、失敗しました、それでもええから使いなさい、と。ここで制限したら、また元に戻るんです。

その上で、今は社内にAI推進委員会が立ち上がって、ルール決めをしています。

これをきっちりやらんかったら、武器が趣味の延長で終わるのか、ビジネスになるのかが分かれる。我々が今回の武器を手に入れて何がしたいのか、これからが一番大事なんです。

僕らはできた時間で新しい価値を作る。
新しい利益を作って、数値を最大化しましょうというのが最終目標。
まず効率化して、そのためにルールを決める。

── 3年後を見据えている、というお話もされていましたね。

3年後ぐらいになったら、AIエージェントはもう意図せず全員が持ってるんですよ。
普通のSaaSやパッケージ型のシステムにも普通に搭載されてるから。
バーッと要求したら勝手にコードを組んでくれて、自動化が組まれる、みたいになるわけじゃないですか。

そうなったら、鉄砲を持ってること自体は、もう何の武器でもなくなる。
全員持ってるんやから。

ほんなら何で差がつくかっていうと、それまでの3年間で何を積んだかだけなんです。

その3年で取った取引先も、変えた仕事のやり方も、元には戻らへん。
でも一番デカいのは、さっき言うた社内の文化ですよ。

だからそれまでが勝負。
この3年間で、どのポジションにおれるかが勝負なんです。

だからこそ、全員やるべきだと。
正直この研修むちゃくちゃすごすぎて、使い方によっては、ほんまにうちの会社ぶち抜けると思った。

実は、ウチの会社が講習を受けた翌週の月曜日の朝礼で、社員に釘を刺したんですよ。

「AIエージェントの講習を受けたって、あんまり外で言わんといてくれ」と。

僕らは講習を受けてテンション上がって楽しかった、が目的じゃないからね。
これをビジネスにして、競合に対して差別化を図って、利益に変えるんや、と。
そしてその利益を還元する。
エージェントの研修を受けたことで、みんなの給料がバンバン上がったで、っていう世界を作る。それが目的やと。

重田様・福原様インタビュー

重田様・福原様 インタビューカット

── 現在どのような業務を担当されているか教えてください。

福原様:私は主に営業事務で受発注をして、あとは経営企画で社長から言われたことを調べたり。それと広報ですね、YouTubeなんかも担当しています。

重田様:私もほぼ同じで、受発注もそうですし、他にもやるべき事が発生したら何でも、という感じです。

(遠山:かなり幅が広いですね)

── 研修を受ける前、AIに対してどんな印象を持たれていましたか。

福原様:SNSでいろんな使い方の情報は流れてくるので、身近ではあったんです。ただ、チャットとしてしか使えていなかったので、全く仕事に活用はできていませんでした。

あとは焦りですね。IT業界ではもうこれが当たり前になって、みんな楽に仕事をしていってる。製造業は遅れてるんじゃないかという焦りがありました。

小さい会社で1人2人でやっているとしても、AIをすごく活用すれば、どんどんスピードも品質も上げて仕事をしてくるわけじゃないですか。
サプライヤーに委託する振り方をしている人だったら、大きな規模と同じようなことができてしまうかもしれない。そういった焦りはありましたね。

「遠山:社内でAI研修をやるべきじゃないかと第一声をあげたのは重田さんだったと聞いています」

重田様:はい、私だったと思います。

社長の事業計画の発表の中でも「AI」というのはかなり重要な要素でした。
そんな中で、ただAIに質問して教えてもらうだけに使うのはもったいないな、と思っていて。でも自分もそれなりの使い方がまだ身についていないし、かといって教えてくれるところを知っているわけでもない。

社長がChatGPTを使い始めて、社員もポツポツ使い始めていたけど、やっぱり活用する人は少なくて。中々パッと一気に広めることはできないじゃないですか、こういう事って。だったら研修を受けて一斉にやった方が早く正確に社内に横展開できるかなと。

重田様・福原様 インタビューの様子

── 研修を受けて、AIとの向き合い方はどう変わりましたか。

重田様:私はそれまで、聞きたいことを相談して、回答をもらうという使い方だったんです。悩みがあって、そのことだけを聞いて、その回答に対してまた聞いて、と。

研修を受けて変わったのは、AIに「提案」をもらえるんだということです。答えだけを求めるんじゃなくて、大きな枠で提案をもらう。それはすごいなと思ったし、「困ったらAI」「こんなことできるかな、じゃあAIに相談しよう」というふうに、かなり変わりました。

あともう一つ、大きかったのは安心して使えるようになったことです。

個人でやっていた時は、無料のClaudeやChatGPTを使っていたんですけど、会社のことを相談したいのに、無料で使っている時は会社のことは相談できなかった。どこまで情報を入れていいかわからないですから。

だから、法人で契約して、研修の中でもセキュリティの話もしてもらい、安心した状態で使えるようになったのが本当に大きいです。

以前は一般的なエクセルの使い方とか、ややこしい数式やVBAを組む時に聞くくらいでした。でも講習を受けてからは、業績のCSVを入れて必要なエクセルに転記してもらう、そのためのPythonのコードを書いてもらうといったことも、安心してできるようになりました。

(遠山:AIとセキュリティは本当にセットで語られるものですが、一番危ないのは「社内で使ってる人は使ってるよ」という状態の会社ですよね)

重田様:怖いですよね。今の時代AIが便利なのは知っているから、放っておいたら社員も勝手にやっちゃうじゃないですか。

福原様:かといって、課金している個人のアカウントに会社のことをガンガン入れるのも違うなと思う。契約主体が個人か法人かで全然違いますから。個人契約から出した生成物を会社で使って、外に出た時の責任を考えたらと思うと、使いづらかったんですよね。

重田様・福原様 インタビューカット

── 研修後、業務の中で具体的に変わったことを教えてください。

重田様:私はもともと、日常業務をできる限りルール化しておきたいタイプなんです。
データを保存する時も、自分でルールを作ってフォルダを分けたり。
それが研修後、もっと「病的」になりました(笑)。

というのも、ルール化しておいた方が、あとで仕組み化する時にやりやすい。
フォルダ名をちゃんと決めておけば、それだけ指示が出しやすくなる。
だから業務整理、自分の棚卸しが一気に進んだ感覚があります。

そこから気づいたのは、AIをどう使っていいかわからない人は、自分の業務整理ができていないということなんです。持ち物が整理できていないから、指示が出せない。

それで、やったことを1秒でパッパッと入力していけるアプリを作りました。
吐き出したCSVの裏にプロンプトを仕込んであって、AIチャットにポンと投げるだけで、その一覧から業務を分析して、カテゴライズして、改善提案までしてくれる。
「今日これをやった、メールをチェックした」と入れていくだけで、AIが分析してくれますよ、というものです。先日、朝礼で発表しました。

何かを効率化したいと思っても、何をしていいかわからないという人が圧倒的に多いんじゃないかと思っていて。小さいところからやっていかないと、日常業務を持っている人の効率化は進まないと思うんです。

他の社員さんたちのそういった部分も支援できたらいいなと。
そういうことを考える時間も増えました。

福原様:私が今考えているのは、グループ会社のことですね。

うちには中島工作所という6〜7名のグループ会社があって、そちらは今もエクセルベースの管理をしているんです。だからこそ、Claude Codeなどを使ってちゃんとシステム化すれば、むしろ既に他のシステムが入っていたヤマトよりぐんと進むんじゃないかと思っています。
仕入れから請求までを一元管理できそうだな、と。

(遠山:確かに既存システムがある会社より、何もない方がむしろやりやすかったりする部分もありますよね)

福原様:そうなんです。一方でヤマト本体は基幹システムを入れているので、そこに入力したデータが確実に残る。セキュリティ面もそうですし、以前使っていたシステムの過去データも見られる。社内で作ったエクセルだったら簡単に消せてしまうし、物理サーバーが壊れたら見えなくなっていたかもしれない。最低限、受発注くらいはデータがなくならないところに保存したいですから。そのバランスを考えながら進めていきたいと思っています。

重田様:あとはAI推進委員会が立ち上がりましたね。
新しく作ったアプリを管理したり、ルールを作っていこう、というものです。
リーダーが平田さん、副リーダーが川嶋さんに決まって、議事録を作る担当まで決めて。
もちろんその会議自体もAIの議事録機能で録音して回しています。

福原様:今はまだ現状把握の段階なので、「好き放題作っていいよ」という状況なんです。
クレジットがなくなったら無制限に課金してあげるよ、と社長が言ってくれて。

重田様:今月末までに、今使っているものと作りたいもの、それと新しく入れたいツールがあれば全部教えてね、というのを社員に投げている最中です。

福原様:最初からガチガチにルールを決められていたら、たぶんここまで出てこなかったと思います。

取材を終えて

ヤマト様は社長をはじめとして、一人一人のキャラクターがとても濃く、本当に魅力的な人たちばかりです。取材でも、皆様の明るい雰囲気とチームワークが印象的でした。企業として見習うところばかりで、私たちもAI導入をする立場でありつつも、本当に勉強になっています。

インタビューを通して、印象に残った言葉が数えきれないほどありました。特に心に残ったのは、AIは一部の人が使うだけでは会社の文化にならないというお話と、今からの3年間に積み重ねた仕事のやり方や社内の文化は、後から簡単には追いつけないというお話です。

社長が「全員で受ける」と決めた理由も、取材後に改めて腑に落ちました。仕事は一人で完結せず、人から人へとつながっていきます。誰か一人だけがAIを使えても、その先の仕事が変わらなければ、会社全体の変化にはなりません。研修前に社長自ら目的を伝え、全員が同じスタートラインに立てるよう準備されていたことが、今のヤマト様の動きにつながっているのだと思います。

そして、重田様・福原様のお話からは、その変化がすでに日々の業務で始まっていることを感じました。重田様はご自身の仕事を整理し、社員の業務を見える化するアプリまで作っている。福原様はグループ会社の仕事をどう仕組み化できるか、既存のシステムやデータの守り方も含めて考えている。お二人とも「AIで何ができるか」で止まらず、「自分たちの仕事をどう良くするか」を具体的に考えていました。

特に印象的だったのは、試すことを後押ししながら、AI推進委員会でルールづくりも進めていることです。まず社員が使い、そこから生まれた工夫を会社の仕組みに育てていく。ヤマト様の取り組みは、AI導入を一度きりの研修で終わらせず、社員の皆様自身の手で会社を変えていく過程なのだと感じました。

今回の取材で、私たちも改めて背筋が伸びました。研修で使い方を伝えるだけでなく、現場から生まれた挑戦が成果につながるまで、ともに考え続けたいと考えています。

辻井社長、重田様、福原様、そしてヤマトの皆様、貴重なお話をありがとうございました。